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越谷 心療内科
さくらメンタルクリニックの
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HSP(Highly Sensitive Person)とは?
2025.06.10 2025.06.30
心療内科について
HSP(Highly Sensitive Person)という言葉をご存知でしょうか。これは、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、「人一倍繊細な気質を持つ人」を指します。病気や障害ではなく、生まれ持った特性であり、人口の約15〜20%、つまり5人に1人がHSPに当てはまると言われています。
あなたは、もしかしたら人よりも敏感で、周りの刺激に疲れやすいと感じていないでしょうか。大きな音や強い光が苦手だったり、人の感情に影響されやすかったり、完璧主義で物事を深く考えすぎたりする傾向はありませんか。もしそうであれば、あなたもHSPの気質を持っているかもしれません。
HSPの4つの特性「DOES」とは?
HSPには、アーロン博士が提唱する「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの基本的な特性があります。この4つの特性が全て当てはまる場合にHSPであるとされます。
D: Depth of processing(深く処理する)
HSPの人は、物事を深く考える傾向があります。表面的な情報だけでなく、その背景や意味、将来的な影響まで深く掘り下げて思考します。そのため、熟考を重ね、慎重に判断を下すことが多いです。しかし、裏を返せば、決断に時間がかかったり、考えすぎて行動に移せなかったりすることもあります。
O: Overstimulation(刺激を受けやすい・興奮しやすい)
HSPの人は、五感からの刺激や情報に対して非常に敏感です。音、光、匂い、肌触りといった物理的な刺激はもちろんのこと、人の感情や場の雰囲気といった非物理的な刺激にも強く反応します。そのため、人混みや騒がしい場所、強い光が当たる場所などでは、すぐに疲れてしまい、ストレスを感じやすい傾向があります。
E: Emotional responsiveness and empathy(感情的反応と共感性が高い)
HSPの人は、感情の起伏が大きく、喜びや悲しみを深く感じます。また、他者の感情を自分のことのように感じ取る「共感性」が非常に高いという特徴があります。相手が怒っていたり悲しんでいたりすると、その感情が自分にも伝染したように感じ、苦しくなることも少なくありません。これは、人間関係において深い絆を築ける長所である一方で、他者の感情に振り回されてしまい、疲弊しやすいという側面も持ち合わせています。
S: Sensitivity to subtleties(些細なことにも気づく)
HSPの人は、非HSPの人が見過ごしてしまうような些細な変化や情報にもよく気づきます。例えば、部屋のわずかな変化、人の声のトーンの変化、相手の表情の微細な動きなど、細部にまで意識が向きます。この特性は、クリエイティブな仕事や細やかな配慮が必要な場面で強みを発揮しますが、同時に、些細なことにも気づきすぎてしまい、完璧を求めすぎたり、周りの評価を気にしすぎたりすることにもつながります。
HSPは「弱点」ではなく「才能」
これらの特性を見ると、「HSPは生きづらい」と感じるかもしれません。確かに、現代社会は刺激にあふれており、HSPの人にとってストレスが多い環境であることは否めません。しかし、HSPの特性は決して弱点ではありません。むしろ、その繊細さゆえに、HSPの人だけが持ちうる素晴らしい才能や強みもたくさんあります。
- 共感力の高さ: 他者の気持ちに寄り添い、深い人間関係を築けます。
- 洞察力の鋭さ: 物事の本質を見抜き、問題解決に貢献できます。
- 創造性の高さ: 細やかな感受性から、独自のアイデアや表現を生み出します。
- 危機察知能力: 些細な変化に気づき、トラブルを未然に防げます。
- 感受性の豊かさ: 美しいものや芸術に深く感動し、人生を豊かに彩ります。
HSPが快適に生きるためのセルフケア
HSPの特性を理解し、上手に付き合っていくことで、より快適に、自分らしく生きることができます。ここでは、HSPの人が実践できるセルフケアについていくつかご紹介します。
1. 自分の「刺激の許容量」を知る
自分がどのような刺激にどのくらい耐えられるのかを把握することが大切です。疲労を感じやすい状況や場所、人との関わり方などを記録し、自分のペースを見つけましょう。無理をして刺激を受けすぎると、心身の不調につながります。
2. 一人の時間・静かな時間を作る
刺激の多い場所から離れ、心と体を休ませる時間を持つことが非常に重要です。静かな場所で過ごしたり、読書や瞑想、好きな音楽を聴くなど、リラックスできる時間を作りましょう。
3. 自然と触れ合う
自然の中に身を置くことは、HSPの人にとって非常に癒しになります。森林浴や散歩、ガーデニングなど、自然と触れ合う時間を積極的に取り入れましょう。
4. 境界線を引く
他者の感情に影響されやすいHSPの人は、意識的に他人との間に「心の境界線」を引く練習が必要です。他者の感情と自分の感情を混同しないように意識し、必要に応じて距離を取ることも大切です。
5. 自分を責めない
HSPの気質は、生まれ持ったものです。自分を責めたり、無理に「普通」になろうとしたりする必要はありません。自分の繊細さを理解し、受け入れることが、HSPの特性と上手に付き合う第一歩です。
6. 理解者を見つける
HSPの気質を理解してくれる友人や家族、パートナーを見つけることも心の安定につながります。もし身近に理解者がいない場合は、HSPのコミュニティやカウンセリングを利用することも有効です。
HSPは、決して「病気」でも「弱さ」でもありません。それは、あなたが生まれ持った個性であり、世界を深く、豊かに感じるための素晴らしい才能です。自分の繊細さを理解し、上手に付き合っていくことで、HSPならではの感性を活かし、あなたらしく輝くことができるでしょう。もしあなたがHSPかもしれないと感じたら、まずは自分自身を深く知り、その特性を受け入れることから始めてみてください。


