睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病です。自分では気づきにくいですが、熟睡できないため日中の眠気や集中力の低下を招き、生活や仕事に大きな影響を及ぼします。放置すると、高血圧・心筋梗塞・脳卒中などの病気の引き金になることもあります。原因の多くは、気道(空気の通り道)が睡眠中にふさがれてしまう「閉塞型」のタイプです。いびきや日中の眠気が続く方は、一度検査を受けてみることをおすすめします

以下のような症状や状態が当てはまる方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

このような場合はご相談ください

  • いびきが大きい、途中で止まると家族に言われた
  • 朝起きたときに頭が重い、すっきりしない
  • 昼間、強い眠気に襲われることがある
  • 会議や運転中など、静かな場で寝てしまう
  • 集中力が続かず、仕事や家事に支障がある
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 起床時に口が乾いていたり、胸が苦しいことがある

こうした状態が続いている方は、検査により原因を明らかにし、適切な治療につなげることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群の症状

SASでは、睡眠中と日中の両方にさまざまな症状が現れます。

1.睡眠中の症状

  • 大きないびき
  • 呼吸が止まる(無呼吸)または浅くなる(低呼吸)
  • 寝汗をかく、夜中に何度も起きる
  • 寝ているのに疲れがとれない

2.日中の症状

  • 強い眠気、特に運転中や会議中の居眠り
  • 集中力や記憶力の低下
  • 起床時の頭痛や口の乾き
  • 抑うつ感やイライラ

このような睡眠の質の低下が、長期的には生活習慣病や心血管疾患のリスクを高めることが数多くの研究で示されています(Peppard et al., JAMA, 2013)。

睡眠時無呼吸症候群の原因

SASの原因は、大きく以下の2つに分類されます。

1)閉塞型睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea)

最も多いタイプで、睡眠中にのど(上気道)がふさがれて空気の通り道がせまくなることが原因です。

  • 肥満による首まわりの脂肪
  • 扁桃腺が大きい、あごが小さい
  • 仰向け寝、飲酒、睡眠薬の使用などが悪化因子

2.中枢型睡眠時無呼吸(CSA:Central Sleep Apnea)

脳の呼吸中枢からの信号がうまく出なくなり、呼吸そのものが止まるタイプです。心不全や脳卒中の既往がある方に多く見られます。
※混合型(OSA+CSA)も存在します。

睡眠時無呼吸症候群の治療

SASの治療は、原因のタイプや重症度に応じて選ばれます。最も信頼されている治療法は以下のとおりです。

1.CPAP(シーパップ)療法:第一選択

  • 睡眠時に鼻に装着したマスクから空気を送り、気道がふさがらないようにします
  • 重症のOSAに対し、世界中のガイドラインで第一選択とされています(AASM, 日本呼吸器学会)
  • 睡眠の質が改善し、日中の眠気や血圧も下がることが報告されています(Giles et al., Cochrane Database, 2006)

2.生活習慣の改善

  • 減量(体重5〜10%の減少でも改善効果あり)
  • 飲酒や睡眠薬の制限
  • 横向きで寝る習慣をつける

3.マウスピース(口腔内装置)

  • 中等症以下の場合、あごを前に出すことで気道のふさがりを防ぎます
  • 歯科専門医と連携して作成されます

4.外科的治療(一部の重症例)

  • 扁桃腺摘出やあごの骨の矯正手術などが検討されることがあります

 

【参考文献】

・日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群診療ガイドライン」
・American Academy of Sleep Medicine (AASM) Clinical Practice Guidelines
・NICE Guideline: Obstructive sleep apnoea syndrome in adults
・Peppard PE et al., Increased prevalence of sleep-disordered breathing, JAMA, 2013
・Giles TL et al., Continuous positive airways pressure for obstructive sleep apnoea in adults, Cochrane Database Syst Rev, 2006

睡眠時無呼吸症候群の診察の流れ

step01

簡易型PSG検査

簡易PSG検査はいびきや日中の眠気などの症状があり、睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者さんに対して最初に行う検査です。装置はコンパクトで、心拍数、酸素飽和度、および呼吸パターンなどの基本的なデータを記録します。

患者さんには寝る前に装置をつけてもらい、普段通りに寝てもらいます。

装置は指に取り付けられる小さなセンサーと、胸部を囲むベルト、鼻のセンサーから構成されています。

これにより、睡眠中の酸素レベルや呼吸パターンを非常に正確に記録することができます。簡易PSG検査は、自宅で検査ができる点が最大のメリットで、普段の睡眠に近い、リラックスした状態で検査ができます。

患者さん自身で検査装置を装着し、普段通りに就寝することで、睡眠中の呼吸状態などを記録します。

検査は保険適用で、3割負担の方で約2,700円です。

お電話でのご予約

TEL.048-919-3383

予約受付:診療時間内

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step02

精密PSG検査

精密PSG検査の装置は、簡易PSG検査のセンサーに加え、脳波、胸部・腹部の換気運動なども記録します。多数のセンサーを付けますが、痛みはありません。

当院の精密PSG検査では、ご自宅で行っていただけます。

検査は保険適用ですが、3割負担の方で約12,000円とやや高価です(別に診察代がかかります)。

ただ入院して検査を行う場合は個室入院になるため、3~5万円程度かかる場合が多く、入院するよりも金銭的・精神的負担が少ないのが特徴です。

簡易検査では主に呼吸の状態を調べますが、精密検査ではそれに加えて睡眠の質を調べることができます。

step03

CPAP療法

CPAP療法は患者さんに特別なマスクを使用してもらう治療で、最も効果的で一般的に広く認知されている治療法です。

CPAP療法は気道に一定の圧力をかけ、睡眠中に気道が狭くなるのを防ぐことで気道が常に開いた状態になり、以下のような効果が期待できます。

【無呼吸やいびきの改善】
気道が確保されることで、睡眠中の無呼吸やいびきが軽減または消失します。

【合併症予防】
無呼吸が改善されると、高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中といった深刻な合併症のリスクを抑制することができます。

【起床後・日中のパフォーマンス向上と生活の質の改善】
質の高い睡眠を得ることで、朝のだるさや日中の眠気、疲労感、倦怠感などの症状が軽減されることが期待できます。その結果、仕事や学業のパフォーマンスが向上し、QOL(生活の質)の向上にもつながります

【集中力や記憶力の向上】
質の高い睡眠は、集中力や記憶力の向上にもつながります。

当院では患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適なマスクの選択や風圧の調整など細かい設定を行っております。医師と相談しながら、治療を進めましょう。