パニック障害とは
パニック障害とは、理由もなく突然、強い不安や恐れに襲われ、胸のどきどき、息苦しさ、めまいなどの身体症状が現れる病です。このような発作を何度も経験することで、「また起きたらどうしよう」との思いから、外出や人混みを避けるようになることもあります。発症のきっかけははっきりせず、健康だった方にも起こり得ます。脳の不安反応が過敏になることで起きると考えられており、心の問題というより「脳の反応のくせ」として理解することが大切です。適切な治療で多くの方が回復しています。
以下のような状態が繰り返し現れる、または「また起きるのでは」と日々の生活に支障をきたしている場合は、パニック障害の可能性があります。
このような場合はご相談ください
- 突然、激しい動悸や息苦しさに襲われる
- 胸が締めつけられるように苦しくなる
- 気が遠くなる、めまいがする
- 「このまま死んでしまうのでは」と感じる
- 何度か同じ発作を経験している
- 発作を恐れて外出や乗り物を避けるようになった
発作そのものは数分でおさまることが多いですが、強烈な不安とともに「予期不安」が生活全体に影を落とすことがあります。
パニック障害の症状
パニック障害では、以下の3つの症状のかたまりが特徴的です。
1.パニック発作
- 突如、以下のような症状が現れ、強い恐怖や不安に圧倒されます。
- 動悸、息切れ、胸の苦しさ
- からだの震え、発汗、吐き気
- めまい、ふらつき、手足のしびれ
- 非現実感(まるで夢の中のように感じる)
- 「気が変になりそう」「死ぬかもしれない」といった思い
2.予期不安
「また発作が起きるのでは」と恐れ、発作が起きていなくても不安が続きます。
3.広場恐怖(ある人にみられる)
発作が起きたときに逃げられない場所(電車・エレベーター・高速道路など)を避けるようになります。
パニック障害の原因
パニック障害の原因は一つではなく、いくつかの要因が重なり合って起こります。
1.脳の働きの偏り
脳の扁桃体や視床下部など、不安や恐怖の反応をつかさどる部位の活動が過敏になっていることが報告されています(Gorman et al., Am J Psychiatry, 2000)。また、神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの異常も関係しています。
2.体質・遺伝的素因
家族にパニック障害の方がいる場合、発症リスクがやや高くなることが知られています(Hettema et al., Biol Psychiatry, 2001)。
3.心理・環境要因
過労、人間関係のストレス、病気や事故などの強い体験をきっかけに発症することもあります。ただし、きっかけがはっきりしないことも多くあります。
パニック障害の治療方法
パニック障害は、適切な治療を行えば改善が望める病です。治療の柱は以下のとおりです。
1.薬による治療(薬物療法)
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):脳の不安反応を和らげます
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系):即効性はあるものの、長期使用には注意が必要
- SSRIは多くの国際ガイドラインで第一選択薬とされています(NICE, APA, 厚労省「こころの健康づくり」など)。
2.精神療法(認知行動療法)
- 発作や不安の悪循環を見直し、症状へのとらえ方を柔らかくしていく治療です
- 不安場面に少しずつ慣れていく「曝露療法」も有効とされています
- 認知行動療法は薬と同等、またはそれ以上の効果が示されています(Hofmann et al., Cognitive Therapy and Research, 2012)
3.生活の見直し
- 睡眠をしっかりとり、飲酒やカフェインを控える
- 急ぎすぎず、心身をいたわる暮らし方が大切です
- 適度な運動や呼吸法も回復を助けます
【参考文献】
・厚労省「こころの健康づくり対策」
・NICE Guidelines: Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults
・APA Practice Guidelines: Panic Disorder
・Gorman JM et al., Neuroanatomy of panic disorder, Am J Psychiatry, 2000
・Hettema JM et al., Genetic and environmental influences on panic disorder, Biol Psychiatry, 2001
・Hofmann SG et al., The Efficacy of Cognitive Behavioral Therapy: A Review, Cogn Ther Res, 2012
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