躁うつ病とは
躁うつ病(そううつびょう)は、「気分」が大きく高ぶる時期(躁状態)と、深く落ち込む時期(うつ状態)とがくり返される、こころの病です。今は「双極性障害(そうきょくせいしょうがい)」とも呼ばれています。脳の気分調整のしくみが乱れ、本人の意思とは関係なく感情がゆれ動きます。多くは20代前半までに発症し、生涯を通じて経過を見ていく必要があります。ただし、適切な薬や支えによって、仕事や暮らしを安定させていくことは十分に可能です。気づきと早めの対応がとても大切です。
以下のような状態が、時期によって繰り返し起こる場合、躁うつ病の可能性があります。
このような場合はご相談ください
- 気分が異様に明るく、止まらない
- 睡眠が少なくても元気に動ける
- お金や仕事、人間関係で大胆すぎる行動をとってしまう
- しゃべり続けて止まらない、自信に満ちあふれる
- 突然、何も手につかなくなるほど落ち込む
- 何週間も気分が晴れず、意欲が出ない
「うつ病」と診断されて治療を続けていても、上記のような“ハイな時期”が過去にあった方は、診断の見直しが必要かもしれません。
躁うつ病の症状
双極性障害では、「躁状態」と「うつ状態」が交互に現れることが特徴です。
1.躁状態(そうじょうたい)
- 気分が高揚し、異常に楽観的になる
- 睡眠時間が減っても元気
- 自分は特別だと感じる(誇大感)
- 考えが次々と浮かび、話が止まらない
- 衝動的に買い物・旅行・仕事に走る
※重度の場合、現実と異なる考え(妄想)や幻聴が出ることもあります。
2.うつ状態(うつじょうたい)
- 気分が沈み込み、物事への興味がなくなる
- 集中できない、体がだるい
- 自分には価値がないと感じる
- 食欲や睡眠に乱れが出る
- 死について考えてしまう
※躁状態から急激にうつに転じることもあります。
躁うつ病の原因
躁うつ病の原因は、複数の要素が関わり合って発症するとされています。
1.脳の働きの偏り
神経伝達物質(セロトニン・ドパミン・ノルアドレナリンなど)のバランス異常や、脳の情動を司る部位(前頭前野・扁桃体)の活動異常が報告されています(Phillips ML et al., Am J Psychiatry, 2008)。
2.遺伝的な要素
双極性障害は遺伝的素因が強く、家族に同じ病を持つ人がいると発症リスクが高まります(Craddock & Sklar, Lancet, 2013)。
3.環境・心理的要因
過労、人間関係の悩み、夜更かしなどの生活リズムの乱れが、発症や再発の引き金になることがあります。
躁うつ病の治療方法
双極性障害の治療は「気分の波を安定させる」ことが中心です。再発を防ぎながら、長く安定した日常を保つことを目指します。
1.薬による治療(気分安定薬)
- リチウム:再発予防に最も効果が高く、長期的な安全性も確立されています
- バルプロ酸・ラモトリギン:特にうつ傾向が強い場合に用いられます
- 非定型抗精神病薬:躁状態に対し効果があり、近年はうつにも有効性が示されています
(Yatham LN et al., CANMAT/ISBD Guidelines, 2018)
2.精神療法
- 病気への理解を深め、早期に気分の変化に気づく力を養う
(家族を交えた心理教育やサポートも重要です) - 睡眠や生活リズムを整える「社会リズム療法」も効果的とされています
3.生活の整え
- 睡眠、食事、運動のリズムを安定させる
- 過労や刺激の多い環境を避ける
- お酒や刺激物のとりすぎを控える
【参考文献】
・日本うつ病学会「双極性障害の治療ガイドライン(2022年版)」
・American Psychiatric Association (APA): Practice Guideline for the Treatment of Patients with Bipolar Disorder
・CANMAT and ISBD Guidelines (Yatham et al., 2018)
・Craddock N & Sklar P. Genetics of bipolar disorder, Lancet, 2013
・Phillips ML et al., Neurobiology of emotion perception in bipolar disorder, Am J Psychiatry, 2008
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