不安障害とは
不安障害とは、現実の危険がないにもかかわらず、強い不安や恐れの気持ちが長く続いたり、日々の暮らしに差し障るほど心配しすぎたりしてしまう心の病です。誰にでも不安を感じることはありますが、不安障害ではその強さや持続時間、生活への影響が過度になります。体の不調(動悸、息苦しさ、めまいなど)をともなうことも多く、まわりの人には理解されにくいこともあります。脳の働きと心のくせがかかわっていることがわかっており、きちんとした治療により回復が望める病です。
以下のような状態が続いている場合、不安障害の可能性があります。早めのご相談をおすすめします。
このような場合はご相談ください
- 理由のない不安が長く続く
- 小さなことでも気になって頭から離れない
- 人前で話すときに極度に緊張してしまう
- 外に出るのが怖くなり、引きこもりがちになる
- 体の不調(動悸・吐き気・震え)をともなうことが多い
- 「このまま倒れるのでは」と思うほどの強い不安がある
- 不安を避けるために日常生活を制限するようになった
これらは単なる「性格」や「気のせい」ではなく、治療の対象となる状態です。
不安障害の症状
不安障害は、以下のような「心の症状」と「体の症状」が組み合わさって現れます。
1.心の症状
- 理由のない強い不安や恐れ
- 最悪の事態を考えてしまう
- 緊張しやすい、安心できない
- 注意力の低下、集中できない
- 回避行動(不安な場面を避ける)
2.体の症状
- 動悸、息苦しさ、胸の圧迫感
- めまい、ふるえ、発汗
- 胃腸の不調(吐き気、腹痛など)
- 筋肉のこわばり、頭痛
- 不眠、寝つきの悪さ
これらの症状は、社会不安障害、全般性不安障害、パニック障害など、複数のタイプに分類されます(DSM-5, ICD-11 参照)。
不安障害の原因
不安障害の原因は複雑ですが、大きく以下のような要素が関わると考えられています。
1.脳の働きの偏り
不安に関わる脳の部位(扁桃体、前頭前野など)の働きが過敏になり、過度な警戒反応が生じます(Etkin & Wager, Am J Psychiatry, 2007)。また、セロトニンやGABAなどの神経伝達物質のバランス異常も関与しています。
2.性格や気質
まじめ、几帳面、完璧を求める性格、あるいは子どもの頃から不安が強かった人は発症しやすい傾向があります。
3.環境・体験
過去のトラウマ、虐待、いじめ、家庭環境の影響などが引き金となることがあります。現在の職場や家庭のストレスも無関係ではありません。
4.遺伝的素因
家族に不安障害やうつ病の方がいると、やや発症しやすくなる傾向があります(Hettema et al., Nat Rev Neurosci, 2001)。
不安障害の治療方法
不安障害は、適切な治療を受けることで回復が期待できる病気です。以下のような方法が柱となります。
1.薬による治療(薬物療法)
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):不安の軽減に有効で、多くの国際ガイドラインで第一選択薬とされています(NICE, APA)。
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系):即効性がありますが、長期使用には注意が必要です。
- SNRIや他の抗うつ薬が使われることもあります。
2.精神療法(認知行動療法など)
- 不安のとらえ方や反応を見直し、生活のコントロールを取り戻す治療です。
- 曝露反応妨害法(ERP)なども症状に応じて用いられます。
- 治療効果は薬物療法と同等以上とされる研究もあります(Hofmann et al., Cognitive Therapy and Research, 2012)。
3.生活の整えとセルフケア
- 睡眠と食事のリズムを安定させる
- カフェインやアルコールを控える
- 呼吸法や軽い運動、瞑想なども効果が期待されます
【参考文献】
・DSM-5-TR(APA, 2022)
・ICD-11(WHO, 2019)
・NICE Guidelines: Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults
・Etkin A & Wager TD. Functional neuroimaging of anxiety, Am J Psychiatry, 2007
・Hofmann SG et al., The Efficacy of Cognitive Behavioral Therapy: A Review, Cogn Ther Res, 2012
・Hettema JM et al., A review and meta-analysis of the genetic epidemiology of anxiety disorders, Nat Rev Neurosci, 2001
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