自閉症スペクトラム(ASD)とは
自閉症スペクトラム(ASD)は、人との関わり方や気持ちの読み取り、こだわりの強さなどに特性が現れる、発達にかかわる心の状態です。昔は「自閉症」「アスペルガー症候群」などと分けて呼ばれていましたが、今では一つの「ひろがり(スペクトラム)」として理解されています。見た目では分かりづらく、「少し変わっている」「空気が読めない」と誤解されることもありますが、脳の働き方の違いに基づくもので、性格や育ちのせいではありません。得意と苦手を見きわめ、支え合うことで暮らしやすくすることができます。
以下のような傾向が子どものころから続いており、日常生活や人間関係に支障が出ている場合、ASDの可能性があります。
このような場合はご相談ください
- 初対面の人との会話や雑談が苦手
- 相手の気持ちをくみ取るのが難しい
- 曖昧な指示や言い回しを理解しづらい
- 物事の順序ややり方に強いこだわりがある
- 特定のものごとに強い興味や集中を見せる
- 場の空気や暗黙の了解を読むのが苦手
- 職場での人間関係やマルチタスクに疲れてしまう
「うまく人と関われないのは自分が悪いから」と悩み続けてきた方にとって、診断が自分を見つめ直すきっかけになることもあります。
自閉症スペクトラム(ASD)の症状
ASDの症状は、「社会的なやりとりの難しさ」と「行動や興味のかたより」の2つの軸に分かれます(DSM-5, ICD-11参照)。
1.社会的なやりとりの難しさ
- 相手の表情や気持ちを読み取ることが難しい
- 雑談や距離感のとり方がぎこちない
- 自分の興味のある話ばかりしてしまう
- 言葉の裏や比喩表現をそのまま受け取る
2.行動・興味・感覚のかたより
- 決まった順序や習慣を変えるのが苦手
- 興味の対象が狭く、深くこだわる
- 音・光・肌ざわりなどの感覚に過敏または鈍感
- 手や体を同じように動かす(常同行動)
これらの特性は個人差が大きく、「静かで気づかれにくいASD」も存在します。
自閉症スペクトラム(ASD)の原因
ASDは「生まれつきの脳の情報処理の違い」によって起こることが分かっています。本人の性格や育て方によってなるものではありません。
1.神経生物学的な要因
脳の社会的な情報処理にかかわる部位(側頭葉、扁桃体、前頭前野など)の機能や連携に差異が見られます(Ecker et al., Lancet Neurology, 2015)。
また、神経伝達物質(グルタミン酸、GABA)の働きの不均衡も報告されています。
2.遺伝的要因
一卵性双生児での一致率や、複数の関連遺伝子の同定から、ASDは遺伝的要因が強いとされています(Sandin et al., JAMA, 2014)。
3.環境要因
妊娠中の感染、早産、低出生体重などが発症リスクと関連する可能性はありますが、決定的な環境要因は今のところ確認されていません。
自閉症スペクトラム(ASD)の治療方法
ASDそのものを「治す」薬はありませんが、特性とうまくつき合い、苦手を補う支援を行うことで、社会的な適応力を高めることが可能です。
1.心理社会的支援
- 構造化支援:予定や環境を分かりやすく整え、不安を減らす支援
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):人づき合いの基本を練習する訓練
- ペアレントトレーニング:保護者や家族が特性に理解を深める支援
2.環境調整
- 感覚過敏への配慮(音・光・刺激を減らす)
- 作業の順序や手順の見える化
- 学校や職場での支援体制の整備
3.薬物療法(補助的)
- 不安、強いこだわり、衝動性が強い場合に限り、抗不安薬や抗精神病薬を短期的に使うことがあります(特に成人ASDにおいて)
- 薬はあくまで補助的であり、本人の理解と環境調整が主な支援の軸となります。
【参考文献】
・DSM-5-TR(APA, 2022)
・ICD-11(WHO, 2019)
・日本児童青年精神医学会「ASD診療ガイドライン」
・NICE Guidelines: Autism spectrum disorder in under 19s: support and management
・Ecker C et al., The neuroanatomy of autism, Lancet Neurol, 2015
・Sandin S et al., The heritability of autism spectrum disorder, JAMA, 2014
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