LD（学習障害）とADHD（注意欠如多動症）の併存が疑われる大人の例

LD（学習障害）とADHD（注意欠如多動症）について解説

   LD（学習障害）は、英語圏では一般的にディスレクシアと呼ばれますが、DSM-5（精神疾患の診断・統計マニュアル第5版）ではSLD（限局性学習症）となっています。
   ADHDは注意欠陥多動性障害と呼ばれていましたが、DSM-5（精神疾患の診断・統計マニュアル第5版）では注意欠如多動症となっています。

LD（学習障害）とADHD（注意欠如多動症）が併存する大人によく見られる相談・症状の例

   ５０代男性。働きながら、別の資格を取るために専門学校に行き始めたところ、分数や小数、文章問題がわからず、色々な授業でつまずきました。根性で何とか試験を通しましたが、やはり何かおかしいと思って受診しました。

   小学１年生の頃、成績は一番下、答案用紙は真っ白で、裏にお絵描きしていました。小学２年生の九九は歌にしてもらってやっと覚えましたが、丸暗記しなければならないものは拷問に等しく、漢字は間違えたまま覚えています。文字がたくさん並んでいるのを見ると気持ちが悪くなりますし、文章はわかりません。絵で説明してもらうとわかることがあります。何人もの先生がつきっきりで教えてくれましたが、何百回教えてもわからないので、教える人が諦めてしまいます。塾にも行きましたが、何も身についていません。

   小学校、中学校の間、いじめられていました。高校の部活でも仲間外れになりました。自分の特性を理解し、寄り添ってくれる友達や先生に恵まれたため、非行に走ることもなくやってこれたのです。

   大人になった今でも、自分は失礼なことを言ったつもりはないのに、なぜか相手が怒り出すことが多いため、話す時は相手の顔色を伺い、非常に気を遣って疲れてしまいます。

   子供の頃から今も、鍵やメガネをなくすなど、忘れ物が多く、薬の飲み忘れも多いです。また忘れたらどうしよう、またミスしたらどうしようと、不安が強く、何もかもメモを取ります。５０代になってから専門学校へ行くことを、良いと思ったらもう決めていました。　

   これまで心療内科に３回受診したことがありますが、発達障害とは気づかれず、仕事のストレスによる適応障害と言われました。

(※複数の症例から個人を特定できないように加工しています）

LD（学習障害）とADHD（注意欠如多動症）が併存する大人への支援・関わり方のポイント

   学習障害(LD、ディスレクシア)の特徴と、ADHD（注意欠如多動症）の特徴が両方見られ、併存が疑われます。

   子供の頃から長い間、誰にもディスレクシアと気づいてもらえないまま、人並み外れた努力を続けてこられたこと、人並み外れた打たれ強さを持っていることを、心から賞賛したいと思います。そして、今の職場や専門学校で必要な合理的配慮を受けられるよう、調整していきましょう。

   ADHDの薬を開始したところ、話があちこちに飛んだり、話し過ぎる症状が落ち着き、頭を整理してから話すことができるようになりました。忘れ物や仕事でのミスも減りました。