ASD（自閉スペクトラム症）が疑われる例

ASD（自閉スペクトラム症）について解説

   DSM-4（精神疾患の診断・統計マニュアル第4版）の頃に、自閉症、アスペルガー症候群、広範性発達障害と呼ばれていたものが、DSM-5（精神疾患の診断・統計マニュアル第5版）では、まとめて自閉スペクトラム症とされました。

ASD（自閉スペクトラム症）が疑われるお子さんによく見られる相談・症状の例

   小学6年生の男の子。低学年の頃からずっと、どちらかといえば優等生です。

   6年生になって塾が増え、好きなサッカーをやめるなど、受験体制に入って生活が変わると、これまでできていたことができなくなりました。寝る時間、起きる時間、食事の時間、お風呂に入る、歯を磨く、といったルーティンが崩れてしまったのです。

   毎朝早く起きて勉強してから登校していたのに、朝起きれなくなって学校に遅刻するようになりました。目は覚めていても、動けなくて2〜3時間ごろごろしています。お母様が起こすとイライラして大きな声を出してしまいます。お風呂や歯磨きも面倒くさがり、なかなか取りかかれなくて時間がずれていきます。

   幼稚園の頃から、時間の感覚がわかりませんでした。時間を逆算して、間に合うように準備するのが苦手です。出かける支度は10分でできると言って、ぎりぎりまでやりたいことをやっていますが、やっと支度に取りかかったと思えば、1時間かかったりします。

   今日・明日の予定はきちんと認識していますが、数週間後の予定はあまりイメージができず、それに向かって準備することが苦手です。でも、自分が大好きなライブの予定は、しっかり日にちを覚えていて、カウントダウンしながら心待ちにしていました。

   学校や塾の宿題がたまっていますが、本人は気にしていません。宿題はぎりぎりに終わらせています。

   受験のためには、10分考えてわからない問題は飛ばして次の問題に取りかかるようにと塾で言われますが、じっくりやりたくて、1問に2時間かけてしまいます。やっているページを完璧に理解してからでないと、次のページに進めません。

   受験まで、あと何ヶ月だから、どこまで勉強を進めておこう、といった時間の逆算ができなくて、同級生たちが感じている焦りが全くありません。

   消しゴムはこれじゃないと嫌、鉛筆はこれじゃないと嫌、ペンはこれじゃないと嫌、というように、いつもの決まった持ち物があります。片付けは苦手で、よく物をなくし、いつもの消しゴムがないから学校に行きたくないと言うので、お母様が一緒に探したりします。ランドセルの中身は、何をどこに入れるか決まっています。学校への道順も、着替える時の順番も決まっています。

   本が好きで、何時間でも読み続けます。最後まで読み終わりたくて、明け方まで読んでいることもよくありました。今は受験で読めません。

   忘れ物は多くありません。やらなければいけないことを忘れてはいませんが、順番や時間を考えていません。

   周りの友達からどう思われているか、とても気にしています。学校で言ってしまったことで、悪く思われていないかと気になって、家でもずっと考えて、眠れなくなってしまう時もあります。

(※複数の症例から個人を特定できないように加工しています）

ASD（自閉スペクトラム症）が疑われるお子さんへの支援・関わり方のポイント

   習慣化したことはできるのですが、生活が変わって習慣が崩れた時、新しい生活を習慣化するまで時間がかかるのも、発達障害の方によくある特徴です。1週間の予定をできるだけ変えず、パターン化していきたいですね。

   その一方で、好きなことに集中していられる環境なら才能を発揮できるでしょうに、と思わずにいられません。みんなと同じことを同じように、満遍なくやらなければならない日本の教育を、窮屈だと感じる方もたくさんいらっしゃるのです。