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越谷心療内科
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ディスレクシアの才能:創造性
2026.03.10
院長のつぶやき
児童精神科の外来で拝見するディスレクシア(限局性学習症;SpLD、学習障害;LD)のお子さんたちは、絵を描くことや工作が好き、音楽が好き、吹奏楽部に入っている、といったお子さんがとてもたくさんいらっしゃいます。レジンでシールを作る、ネイルの色やデザインに凝る、様々なブラシを使い分けてメイクが上手、といった細かい創作から、粘土や段ボールで家を作るといったダイナミックなものまで、一人ひとりの才能を感じます。写真が上手で、小学 1 年生でフォトコンテストに入賞したお子さんもいます。
外来にいらっしゃるディスレクシアの大人の方では、起業、建築や設計、広告デザイン、アニメのイラストレーター、IT関係といった分野で、才能を発揮している方が多くいらっしゃいます。
文部科学省も、苦手なことだけに着目していた従来の支援だけでなく、才能に着目した、新たな方針を打ち出しています(図1)※1。

世界的にも、ディスレクシアの人は創造性があることが、一般によく知られており、診察室での経験と合致します。例えば、文学ではアンデルセンやアガサ・クリスティ、芸術ではロダン、ピカソ、アンディ・ウォーホル、ウォルト・ディズニー、音楽ではプッチーニ、科学や技術の分野ではエジソンやアインシュタイン、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチのように、さまざまな分野で独創的な業績を残した人たちが、おそらくディスレクシアだっただろうと言われています※2※3。
さらに、芸術や科学だけでなく、ビジネスではウィリアム・ヒューレットやリチャード・ブランソン、政治ではウィンストン・チャーチルやジョン・F・ケネディ、スポーツではモハメド・アリ、俳優ではトム・クルーズやウーピー・ゴールドバーグなど、独創性や柔軟な発想が求められる分野で成功している例がたくさんあります※3 。
その一方で、「ディスレクシアの人は創造性がある」ことを科学的に証明することは容易ではありませんが、その試みが続けられています。世界中の研究の中から「ディスレクシアの人は創造性がある」という報告もあれば「有意差はない」という報告もあり、決着はついていませんが、すべての領域において創造性があるとは言えないまでも、非言語的な創造性や図形的な創造性において、ディスレクシアの人がそうでない人より高い得点を示す傾向はあるようです※3※4※5。
ディスレクシアの中学生と、そうでない中学生を対象に、創造性について調べた研究では、創造的思考を、拡張(Widening:多くのアイデアを出す)、結合(Connecting:異なるアイデアを結びつける)、再構成(Reorganizing:視点を変えて組み替える)という3つのプロセスに分けて評価しました※2。

その結果、結合(Connecting)の能力において、ディスレクシア群は対照群より有意に高い成績を示しました。つまり、一見関係のないアイデア同士を結びつけて新しい発想を生み出す力において、ディスレクシアの中学生が優れている可能性が示されました(図2)※2。
別の研究では、小学生と中学生に分けて図形を用いた創造性(creativity)のテストを、流暢性(fluency:どれだけ多くのアイデアを出せるか)、柔軟性(flexibility:発想の幅がどれくらい広いか)、独創性(originality:どれくらい独自のアイデアか)という3つの観点で評価しました(図3)※3。

その結果、小学生の段階ではディスレクシア群と対照群の間に大きな差は見られませんでした。しかし、中学生になると、特に「柔軟性(flexibility)」において、ディスレクシア群のほうが高い傾向が見られました。
また、独創性(originality)については、学年が上がると、対照群では下がる傾向がありましたが、ディスレクシア群ではあまり下がらないという違いも見られました。
この研究から分かるのは、ディスレクシアのお子さんは、そうでないお子さんに比べて、必ずしも最初から創造性が高いとは言えませんが、学年が上がるにつれて、発想の柔軟さなどの面で強みが現れてくる可能性があるということです※3。
この著者たちは、この違いの背景として学校教育の影響にも注目しています。一般のお子さんは、学年が上がるにつれて正解志向や標準的な考え方が強くなり、独創的な発想が抑えられる可能性があります。一方で、ディスレクシアのお子さんは、視覚的・空間的な情報処理や非典型的な思考のスタイルを用いることが多く、結果として柔軟な発想が保たれやすい可能性があると考えられています※3。
また、この研究では図形を用いた創造性(言語に依存しない創造性)を測定しており、ディスレクシアの特性を理解するためには、読み書きなどの言語課題だけでなく、こうした視覚的・図形的な課題で能力を評価することも重要であると指摘されています※3。
ディスレクシアのお子さんたちが、自己肯定感や能力を潰されることなく、十分な教育を受け、創造性を発揮することができる社会になれば、ディスレクシアでない人々も、ディスレクシアの創造性による恩恵を享受できる社会になるでしょう。
監修者
院長 村重直子
当院は埼玉県越谷市の南越谷駅から徒歩1分、新越谷駅から徒歩2分という立地で、うつ病、不安障害、パニック障害、不眠症、適応障害、児童・思春期のメンタルケアまで幅広く対応し、一人ひとりを大切に診療に当たっております。
私はこれまで、ニューヨークのベス・イスラエル・メディカルセンター、国立がんセンター中央病院、および複数のクリニック・訪問診療に携わり、国内外で多様なライフステージに応じた医療に従事してまいりました。
一人ひとりに寄り添い、その方の人生に伴走する医師でありたいと願って診療しています。
特に児童精神科・思春期のメンタルケアでは、一人の母親としても共感を持ちながら、お子さんの「過去・現在・未来」を一緒に考えてまいりましょう。思春期ではご本人の意思を尊重し、必要に応じて親御さんと別々の時間を設けることもございます。すべては、将来、お子さんの持つ可能性が花開く時のために。
心の不調でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。越谷市を中心に、地域の皆様の頼れる診療所として、スタッフ一同、誠意をもって診療にあたります。