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「うつ病」「躁うつ病」「抑うつ状態」の違いとは?~心療内科外来の現場から~
2026.03.20
メンタルヘルス辞典
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「うつ病」「躁うつ病」「抑うつ状態」~似て非なる名称~
厚生労働省の調査によると、心療内科の外来にいらっしゃる患者さんのうち、「うつ病」と「躁うつ病」がその代表格である「気分[感情]障害」が156.6万人と、もっとも多くなっています※1。

このように、「うつ病」と「躁うつ病」は同じ疾病分類にまとめられていますし、混同されやすいのですが、実はまったく異なる病気で、効く薬も違います。さらにややこしいことに、「抑うつ状態(うつ状態)」という概念もあります。
これらは患者さんにもわかりにくいようで、心療内科の外来で、躁うつ病の方や適応障害の方をはじめ、多くの方が「私はうつ病ですよね?」「うつ病に当てはまると思います」とおっしゃいます。
うつ病、躁うつ病、適応障害など、多くの病気に共通してみられるのが、「抑うつ状態(うつ状態)」です。
「抑うつ状態」とは
「抑うつ状態」とは、気分が落ち込んで何もやる気が出ない状態を指し、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、思考力・集中力の低下などが見られます。「抑うつ状態」は、病名ではなく、状態を示しています。
「抑うつ状態」となる原因は、実は非常に幅広く、様々な要因が考えられます。例え ば、うつ病、躁うつ病、適応障害、悲嘆反応(身近な人との死別やペットロスなど)、不安障害などの心の病気から「抑うつ状態」になることもありますし、甲状腺機能低下症、貧血、脳卒中、認知症、がん、心筋梗塞といった体の病気から「抑うつ状態」になることもあります。降圧剤、ホルモン剤、インターフェロン、アルコールのように、薬剤性・物質誘発性の「抑うつ状態」もあります※2※3。
「うつ病」と「躁うつ病」とは
一方、「うつ病(大うつ病性障害)」と「躁うつ病(双極性障害)」は、「抑うつ状態」を呈するたくさんの原因の中の一部であり、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)でそれぞれ診断基準が定められています。
「うつ病」と「躁うつ病」を見分けることは難しい
「うつ病」と「躁うつ病」は、効く薬が違うので、きちんと区別することが重要です。両者を見分けるため、心療内科の外来では、「うつ病」にはなく、「躁うつ病」にだけある、気分が高ぶる状態(躁状態や軽躁状態)が、これまでにあったかどうかを伺います。しかし実際には、ご本人が気分の高まりを自覚されていない場合や、これまでにまだ躁状態を経験していないだけという場合もあります※5※6※7。
さらに厄介なことに、「躁うつ病」では、気分が高ぶる期間より「抑うつ状態」の期間のほうが長いことが、「躁うつ病」の方 146人を13年間追跡した研究で示されています。この研究では、「躁うつ病」の方は 13年間のうち約40%の期間を抑うつ状態で過ごし、躁状態または軽躁状態であった期間は 10%未満にとどまり、無症状の期間はおよそ半分だったのです※8※9※10。つまり、「躁うつ病」の方が心療内科の外来にいらっしゃる時には、躁状態であるよりも、抑うつ状態である確率のほうが高いのです。
そのため、「うつ病」と「躁うつ病」を区別するのが難しいことも少なくなく※7※11※12※13※14、「躁うつ病」の発見が遅れることは一般的にみられるとされています※7※15。
「うつ病」と「躁うつ病」では治療薬が違うため、見分けることが重要
もし「躁うつ病」であるにもかかわらず診断が遅れると、適切な治療(気分安定薬)の開始が遅れてしまいます※7※16。また、「躁うつ病」の方に対して、気分安定薬を使わずに抗うつ薬のみを使った場合、一部の方では気分が高ぶる状態(躁状態)や、抑うつ状態と高揚が混ざった状態(混合状態)に移行したり、あるいは気分エピソードが頻回化(サイクルの加速)したりすることがあります※7※17※18。
このような理由から、「抑うつ状態」の背景にある原因を慎重に見極め、一人ひとりに合った治療を選ぶことがとても大切です。
参考:
※1 厚生労働省 第4回 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 令和7年1月15日(水)
【参考資料4】精神保健医療福祉の現状等について[PDF 形式:459KB]
※2 Depression in the Primary Care Setting. Park LT, Zarate CA. The New England Journal of Medicine. 2019;380(6):559-568. doi:10.1056/NEJMcp1712493.
※3 Prevalence of Prescription Medications With Depression as a Potential Adverse Effect Among Adults in the United States. Qato DM, Ozenberger K, Olfson M. JAMA. 2018;319(22):2289-2298. doi:10.1001/jama.2018.6741.
※5 Goldberg JF, Harrow M, Whiteside JE: Risk for bipolar illness inpatients initially hospitalized for unipolar depression. Am J Psy-chiatry 2001; 158:1265–1270.
※6 Perlis RH, Miyahara S, Marangell LB, Wisniewski SR, OstacherM, DelBello MP, Bowden CL, Sachs GS, Nierenberg AA: Long-term implications of early onset in bipolar disorder: data fromthe first 1,000 participants in the Systematic Treatment En-hancement Program for Bipolar Disorder
※7 Roy H Perlis 1, Eileen Brown, Robert W Baker, Andrew A Nierenberg. Clinical features of bipolar depression versus major depressive disorder in large multicenter trials. Am J Psychiatry. 2006 Feb;163(2):225-31. doi:10.1176/appi.ajp.163.2.225. https://psychiatryonline.org/doi/epdf/10.1176/appi.ajp.163.2.225
※8 Judd, L.L., Akiskal, H.S., Schettler, P.J., Coryell, W., Endicott, J., Maser, J.D., Solomon, D.A., Leon, A.C., Keller, M.B., 2003. A prospective investigation of the natural history of the long-term weekly symptomatic status of bipolar II disorder. Arch. Gen. Psychiatry 60 (3), 261–269.
※9 Judd, L.L., Akiskal, H.S., Schettler, P.J., Endicott, J., Maser, J., Solomon, D.A., Leon, A.C., Rice, J.A., Keller, M.B., 2002. The long-term natural history of the weekly symptomatic status of bipolar I disorder. Arch. Gen. Psychiatry 59 (6), 530–537.
※10 Differential Diagnosis of Bipolar Disorder and Major Depressive Disorder. Hirschfeld RM. Journal of Affective Disorders. 2014;169 Suppl 1:S12-6. doi:10.1016/S0165-0327(14)70004-7.
※11 Ghaemi SN, Sachs GS, Chiou AM, Pandurangi AK, Goodwin K: Isbipolar disorder still underdiagnosed? are antidepressantsoverutilized? J Affect Disord 1999; 52:135–1444.
※12 Ghaemi SN, Boiman EE, Goodwin FK: Diagnosing bipolar disor-der and the effect of antidepressants: a naturalistic study. J ClinPsychiatry 2000; 61:804–8085.
※13 Manning JS, Haykal RF, Connor PD, Akiskal HS: On the nature ofdepressive and anxious states in a family practice setting: thehigh prevalence of bipolar II and related disorders in a cohortfollowed longitudinally. Compr Psychiatry 1997; 38:102–1086.
※14 Hirschfeld RM, Lewis L, Vornik LA: Perceptions and impact ofbipolar disorder: how far have we really come? results of theNational Depressive and Manic-Depressive Association 2000survey of individuals with bipolar disorder. J Clin Psychiatry2003; 64:161–174
※15 Lish JD, Dime-Meenan S, Whybrow PC, Price RA, Hirschfeld RM:The National Depressive and Manic-Depressive Association(DMDA) survey of bipolar members. J Affect Disord 1994; 31:281–294.
※16 Benazzi F, Rihmer Z: Sensitivity and specificity of DSM-IV atypi-cal features for bipolar II disorder diagnosis. Psychiatry Res2000; 93:257–262
※17 Altshuler LL, Post RM, Leverich GS, Mikalauskas K, Rosoff A,Ackerman L: Antidepressant-induced mania and cycle acceler-ation: a controversy revisited. Am J Psychiatry 1995; 152:1130–11388.
※18 Wehr TA, Goodwin FK: Can antidepressants cause mania andworsen the course of affective illness? Am J Psychiatry 1987;144:1403–1411
監修者
院長 村重直子
当院は埼玉県越谷市の南越谷駅から徒歩1分、新越谷駅から徒歩2分という立地で、うつ病、不安障害、パニック障害、不眠症、適応障害、児童・思春期のメンタルケアまで幅広く対応し、一人ひとりを大切に診療に当たっております。
私はこれまで、ニューヨークのベス・イスラエル・メディカルセンター、国立がんセンター中央病院、および複数のクリニック・訪問診療に携わり、国内外で多様なライフステージに応じた医療に従事してまいりました。
一人ひとりに寄り添い、その方の人生に伴走する医師でありたいと願って診療しています。
特に児童精神科・思春期のメンタルケアでは、一人の母親としても共感を持ちながら、お子さんの「過去・現在・未来」を一緒に考えてまいりましょう。思春期ではご本人の意思を尊重し、必要に応じて親御さんと別々の時間を設けることもございます。すべては、将来、お子さんの持つ可能性が花開く時のために。
心の不調でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。越谷市を中心に、地域の皆様の頼れる診療所として、スタッフ一同、誠意をもって診療にあたります。